ハンドカットログハウス建築日記

HAKUGINは静かに暮らしたい

ハンドカットログハウス建築&日記

樹種の決定・無塗装について

今回は、ログハウスの個性をどうやって出すか、樹種の決定、無塗装にした経緯を書きたいと思います。

 

今までのブログを読んでいただいた方々なら、ところどころに関係した内容が書いてありますので、ある程度分かる方もいるかもしれませんが。

 

まずは、ハンドカットのフルログをたくさん見てきた中で、その中でもキラリと輝くもの、影響を受けたものを画像でご紹介します。

 

まずは比較のためオーソドックスなものを↓

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アウトリガーで桁を左右それぞれ1m外に出して、大屋根。屋根の角度も斜め45°の切妻屋根で、ドーマー無し。妻壁が南を向いており採光は充分、明るい室内と、掃き出し窓で連結したウッドデッキでリビングと外の繋がりがあります。

ただし、雨と日光に当たり、メンテナンスが欠かせない構造です。

 

では影響を受けたのが、まずはこちら↓

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こちらは基礎が高く、石が貼られており、ログ材はシルバーパインです。シルバーパインとは、北欧の森に生えていたパインの木が立ち枯れした(立ったまま枯れて、乾燥し、色も灰色に変色した)ものです。何年もかかって立ち枯れしたために、充分乾燥しており、これをログ材として使うとセトリングしません。また表面は独特の灰色で、内部はまだ茶色いため、木肌と木口で色が違うのも魅力的です。屋根も角度が浅く、平屋っぽい、重心が低い安定感があります。ログエンドを切り揃えず、デコボコなのもいいですね。

 

お次はこちら↓

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こちらは牧場にある小屋。

北米の西部開拓時代に、建材がなく、その場に生えていた木から作った簡素な小屋が丸太小屋の原点です。

 

続いてこちら↓

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長野県某所にある個人別荘。小さな別荘ですが、ログ材の太さが圧巻です。一般的にログ材の太さは平均で直径30〜35cmくらい、10〜12段くらいです。少なくても8〜10段くらいは組みますが、これは6段!直径の平均は50cm以上あるでしょう。

 

続いてこちら↓f:id:HAKUGIN:20200213203627j:image

カナダの厳寒地・豪雪地にある、スキーロッジとして使われているログハウス。屋根の上に1mくらい雪が積もっています。ログハウスと雪は、似合う組み合わせです。豪雪地に住む方々談、"雪に囲まれた方があったかいんだよ。"

 

続いてこちら↓
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上高地帝国ホテル。ログハウスと同じ丸太組工法でできています。山の中にある為、目立つ色である赤の屋根は山小屋では定番です。発見しやすいことで、命が助かる事もある。必要だから自ずと決まった色です。また、基礎も石組み?石張りかも?いずれにしても自然素材を使った小屋の延長です。

 

これらの画像から、自分が建てるログハウスの個性はいいとこ取りしました。

過去のブログにあるコンセプトではなく、具体的なプランニングのための条件です。

・基礎は高く、石張りとする。

・屋根は大きくかける。雨や雪、日光がなるべく当たらないようにすることで、メンテナンスフリーにする。また、屋根の角度は浅く、重心が低くてどっしりと地面に根差したような安定感ある建物とする。屋根の角度が浅いことで、雪が降ったら屋根の上にとどまりやすく、雪とログハウスの組み合わせが楽しめる。

・ログ材の表面は、日焼けや乾燥と共に色が変わってゆく。長い目で見て、乾燥が終わった時の色を想定しておく。または古いログハウスを見て、実際の色を確かめておく。

・ログエンドは切り揃えない。無造作に木を積んだかつてのログハウスのように長さはバラバラでよい。

・ログ材は太く! 現実に、小さめの別荘なら直径50cm以上、6段組みの物がある。6段組み以下で普通サイズのログハウスを建てる。

・ログハウスの山小屋の延長である、上高地帝国ホテルの要素を取り入れる。屋根は赤で金属製、基礎は石張り。

 

 

かなり、私のログハウス計画の核心に近づいて来ました。

ここで忘れてはいけないのは、肝心のログ材をどうするかです。それがログハウスの要です。屋根や基礎よりも、ログ材に一番こだわりたいところです。

 

ログ材を選ぶには、その樹種の特徴を踏まえておかなければなりません。強度、耐久性、耐朽性、色、木目、木肌、香り、などてす。

そこで、ログ材が経年変化でどう色が変わるかを画像で紹介します。

まずはこちら↓

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ハンドカットのフルログとしては定番のログ材、ウエスタンレッドシーダーです。

これを見て、暗い・・・

と思うのは私だけでしょうか?

色の変化には主に日光が影響します。いわゆる日焼けです。古いものはみんなこの色。木材保護塗料を塗っていても同じです。無色・透明の塗料ではなく色付きの塗料で着色してしまえば、ログ材の色は分かりませんが・・・私はそんな厚化粧みたいなものは好みません。

いろいろなログハウスメーカーさんにもログ材の色の変化・日焼けについて聞いてみましたが、どの方も同じ答えでした。

"どんな樹種を選んでも、日焼けするのは一緒です。皆一様に濃い色になっていきます。"

私が建築依頼したC社の方も同じ考えでした。

長い目で見たら、どのログハウスもあんな暗い家になってしまうのか・・・と落胆していたところ、出会ったのがこちら。↓

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明らかに今まで見てきた古いログハウスとは雰囲気が違います。

内部はこんな感じ↓
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これもC社が約25年前に建てたログハウスですが、話を聞くと樹種はイエローシーダーで無塗装だそうです。

 

 

 

 

築25年以上?

 

 

 

 

無塗装?

 

 

 

 

また頭の中で雷が落ちた瞬間でした。

 

ハンドカットのフルログはみんな木材保護塗料を塗ってしまうんじゃなかったの?

高温多湿の日本は、そうでなければログハウスが腐ってしまうんじゃなかったの?

25年も無塗装で維持してきたログハウスがあるの?

 

王道のレッドシーダーは日本でいうスギに近く、内部は赤いです。これが日焼けすると先の通り真っ黒に近い暗い感じになります。

イエローシーダーは日本でいうヒノキに近く、木肌はなめらか、色もヒノキによく似ていて薄いクリーム色の様。これが日焼けすると上の画像のように暗くなり過ぎず、いい感じです。元々ヒノキで建てたかったのですが、北米産ヒノキとも言えるイエローシーダーでもいいのかな?という気がしてきました。

また、これが建っている場所が軽井沢。夏は涼しく、冬は寒いですが、年中霧がかかる湿度の高い場所です。ログ材には湿度が高いのはよくないのですが、その軽井沢で無塗装で維持してきたログハウス。日本の他の場所でも同じように維持していけるのではないか・・・

 

ちなみにC社が建てたイエローシーダー材のログハウスは他にもあります。

外観はこちら↓

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当時で築一年くらい、塗料を塗ってるので茶色いですが。

内装はこちら↓

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ヒノキに近いだけあって、クリーム色っぽくて木肌はなめらかです。

 

ここで私なりにレッドシーダーとイエローシーダーの特徴をまとめておきます。

〈レッドシーダー〉

・ハンドカットログの王道、日本のスギに近い

・独特の芳香はかなり魅力的。日本の木には無い甘い香り

・年輪は密で数えられないくらい。寒くて成長がゆっくりの証(ログ材として使うような太いものは樹齢300年くらいありそう)。その分強度もある

・木肌は中心付近は赤、ピンク、濃い茶色、外側は茶色。木によって、部位によって色が若干異なり、グラデーションも見られる。日焼けで濃い黒っぽい茶色になる。

・イエローシーダーよりは柔らかく、ビルダーさんは加工しやすいらしい

・湿度にも比較的強く、腐れ、虫に対しても強い

 

〈イエローシーダー〉

・ハンドカットの外材のログ材としては使用量で3番手、レッドシーダー、ダグラスファー、イエローシーダーの順。日本でいうヒノキに近い

・香りもヒノキに近い。ツンとした引き締まった感じの香り。一般的に嗅いだら、木だね〜という感じ。レッドシーダーの香りを知らなければ、木らしくて良いと言える

・年輪はレッドシーダーと同等に密。強度はイエローシーダーの方が上

・木肌もヒノキによく似ている。中心付近はピンク、外側はクリーム色。日焼けで、くすんだような白みがかったような茶色になる

・固く、ビルダーさんは加工しづらいらしい。強度がある反面、乾燥に伴う暴れ(反ったり、ねじれたり、変形すること)も少々あるかも。過去に会ったビルダーさん談、"イエローは暴れ出したら止められないんだよ〜"

・湿度、腐れ、虫にはレッドシーダーより強い。日本でもスギよりヒノキの方が強いのと同じ

 

従って、無塗装でいく場合、イエローシーダーのほうが長い目で見たら良いです。これは樹種の特徴から自ずと決まりました。

また、日焼けによる変色によって暗い感じになってもいいか、明るいすたれた感じがいいか、好みにもよります。

一つ心残りなのは、やはりレッドシーダーの香り。これは知ったら虜になります。死ぬまでに一度は経験しておくことをオススメします。ちなみに外構、エクステリアなどを扱っている会社のレッドシーダーの板材を嗅いでみたら、香りが薄くて丸太とは全然違いました。無印良品のレッドシーダーのハンガーなんかは香りは皆無でしたね。本物の丸太から、直接鼻をくっつけて嗅いでみてください。

本物を知る、ということはお金と時間がかかります。本当に新鮮な刺身が食べたかったら、漁港まで行って、一番高い物をその場で食べることです。でも、知識だけでなく経験からものが言える方が、説得力がありますよね。本物を知る、ということは私の人生のテーマの一つです。

 

過去のブログに書いた、環境負荷を減らすために国産材にする、ということに矛盾するのではないか?という指摘も聞こえてきそうです。

しかし、その答えはイエローシーダーの丸太の前に立てば、自ずと導き出されます。

年輪の過密さです。

本物と出会うと呆然となります。

目の前のログ材は自分よりも300年以上先輩なのです。

年輪の幅は1mm以下、数えようと思っても、途中でどこまで数えたか分からなくなります。

この年輪の過密さから来るログ材自体の強度を考えると、国産材はあり得ません。

また、環境負荷とは過去と現在だけでは測れないと考えます。未来のメンテナンス・建て替えのサイクルなどと、木材の育つサイクルも天秤にかける必要があります。一時的に環境負荷を与えても、その後メンテナンスフリーで余分な負荷を与えず、使った木材量以上に森に木材が育つ時間が確保できるなら、それは長い目で見て環境負荷が少ないと言う事ができます。

従って、ログハウスを建てるような自然を愛する人々は、物の価値は後から決まることを知っているはずです。一時的な出費がかさむことだけに捉われてはいけません。

フランス人は服を10着しか持たない、というのも同じ発想だと思います。(読んだこと無いですが)

一生使える服を一度だけ買うか、一年で捨てる服を毎年ユニクロで買うか、ということです。

 

 

こうして、私のログハウス計画の概略、樹種、無塗装が決まりました。

ログハウス建築を決意してから、土地探しに時間がかかったので、色々と考える事ができました。

あくまでも私のログハウス建築計画であって、みんな同じである必要はありません。優先順位は各個人によって異なるはずです。

しかしどんな計画でも、その理由があるはずです。

その理由が答えられるか?

その根拠となる経験値をお金と時間を使って得ているか?

そういう方にはぜひ一度お話しを聞かせて頂きたいですね。

これからハンドカットログハウスを建てる方も、ぜひこのマニアックな世界へ足を踏み入れて下さい。

建築会社の色に染まらない、オリジナルのログハウスが建てられる事でしょう。