ハンドカットログハウス建築日記

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ログハウスのセトリング過程について

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画像は車庫付きのフルログ。

車庫部分が折れ屋根で繋がってます。

雨や雪の日に、濡れずに車に出入りできるのは便利ですね。

車に日光も当たらず霜も降りないので、車にも優しいです。

ただし、折れ屋根はあまり好きではないです。見た目ではなく機能的な問題からです。

雪が多い地域は、この折れたところに雪がたまります。

また、さらに問題なのは屋根の内部。もし水漏れして屋根内部に水が入った場合、内部を水がつたっていっても、屋根角度が浅くなる所で止まります。そして、そこだけがカビたり、腐食したりするかもしれません。これが屋根角度一定ならば、水はけはよくなります。屋根内部の断熱材なども多少ずり落ちてきますので、ここで受け止めることになるのでしょうね。

 

 

では本題へ。

 

今回はセトリング過程についてです。

セトリングの言葉の説明を、一応。

セトリングとは、ログ材の乾燥が進むとともに直径も痩せてくるので、ログ壁の高さが下がることを言います。実際は上のログ材の重さで潰される事も影響してきます。

ログハウスに興味がない人には驚きですよね?

家の壁の高さが時間が経つにつれて低くなってくるのですから。

ログハウスに使う丸太は、伐採して、樹皮を剥がして、乾燥して含水率20%以下になったら加工します。

でもその後も乾燥は続くので、建てた後も丸太は痩せていきます。

建築後、5年くらいはどんどんセトリングし、壁の高さは低くなる一方です。

5年以上経ってくると、乾燥はゆっくり進むので、季節によっては水分を吸って直径が膨らむ事もあります。

夏は湿度が高いので膨らみ、冬は乾燥しているので痩せる。大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら、徐々に痩せていきます。三歩進んで二歩下がる感じですね。

平均すると、伐採した直後の生木のセトリング比率は1/16です。生木が乾燥し終わると、丸太の直径としては15/16になっている、ということです。

分かりやすく例えると、生木の状態でログハウスを加工し、壁の高さが240cmあったとします。するとセトリング後には225cmになっている、ということです。

一階の壁が15cm低くなる!

これは、とても大きな変化です。

経験豊富な大工さんでも、ログハウスの知識がなければセトリングのことなど知りません。

普通に固定して窓を付けてしまえば、上からログ材が下がってきて開けられなくなります。最悪の場合、窓が押しつぶされてガラスが割れます。

扉も上から押さえつけられて、開かなくなります。

厳密に言うと、セトリング比率は他の要素にも影響を受けますので予測が難しくなります。樹種の違い、産地の違い、加工開始時点での含水率、加工にかかる期間の長さ、などです。

従って、ログハウスの経験が豊富なログビルダーの方々は、これらを予測して加工しています。

はじめは隙間が空くのは覚悟の上。長い目で見てセトリングが終わった頃にガッチリ組み合わさるように、セトリング比率を予測して、加工幅を変えているのです。

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ノッチ(ログ材の交差部、上の画像)の加工はセトリングしても隙間が開かないような加工方法を取っているので心配無いとして、差が出るのはグルーブでしょう。

グルーブとは、上から重ねる丸太の下部分を、下の丸太の形状に合わせて彫り込む加工のことです。グルーブがあるので丸太が重なった時に下の丸太は上の丸太に少し食い込んだ状態になります。重なりに縦幅と横幅ができ、隙間が開きにくくなります。

画像はグルーブを含む、丸太の重なり部分のアップ↓

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また、丸太の部位によっても加工幅を変えています。

具体的には、室内側と室外側(ノッチから外に出た部分)でグルーブの加工幅が違います。室外側の方が最低6mmは大きく削ります。

これは、丸太の乾燥が室内の方が早く進むことに関係しています。室内側のログ材が乾燥して痩せ、室外側のログ材が乾燥が遅く太いままでいると、どうなるか?室外側だけログ材どうしが上下接していて、室内側のログ材は浮いてしまいます。浮いたところはそのまま隙間となってしまいます。それを防ぐために室外側を大きく削るのです。

 

ビルダーさんたちは、どこまで丸太のセトリングを予測しているのでしょうか?

もしかしたら、それはビルダーさんによって違うのかもしれません。

ビルダーさんの経験値が大きく関係するのは間違いないでしょう。

 

私が依頼したC社の知り合いのビルダーさんは、"木が育った環境をログ材の配置に活かしている"、と言っていました。

ビルダーさんたちは丸太を見れば、その丸太があった場所や環境がおおむね分かるそうです。北側の斜面で陽が当たらない所と、南側の斜面で陽がよく当たる所では、木の育ち方が違うのは当然です。従って、北側で育ったログ材は家の北側に、南側で育ったログ材は家の南側に来るように配置するようにしている、とのこと。それが木にとって無理が無いのだとか。また木を横にした時も、北を向いていた面を北に向けて、南を向いていた面を南に向けるようにしている、とのこと。

ここまで気を使ってログ材の加工をされているのですね。

 

また、セトリング過程でもう一つ事実があります。

方角によって乾燥具合、セトリング速度が異なるのです。

家の南側や西側は陽が当たる時間が長く、早く乾燥します。従って、家の南面、西面の方が先に壁が低くなります。北面、東面は遅れて低くなってきます。

そうすると、一時的に屋根、二階の床が傾いて水平でなくなります。

セトリングが落ち着いた頃に屋根や二階の床も水平になるかどうかはビルダーさんの腕しだい、ということになるでしょう。

 

以上、セトリングと、その過程についていろいろ書いてみました。

参考になれば幸いです。

一階の壁の高さが変わる事自体、耐えられないという人は、マシンカットも含めてログハウス自体を断念しましょう。

このブログを読んで頂いている方々ならばきっと、自然素材であることを理解し、寛大な心で笑って許せることでしょう。