コンセプトについて
画像は長野県某所で見かけて突撃訪問したログハウス。逆光で見づらくてスイマセン。
一階の基礎には石が貼られ、木が這うように取り付けられていて、後から施主さんがアレンジしたであろう造作が唯一無二の存在感です。
聞いてみると栃木県B社が建てたもので、太いログ材8段組みで出来ています。"太いワイルドなログハウスならB社でしょ?"とのこと。
中に入れなかったのが残念でした。
ちなみにこのログハウスはかなり大きな地震の被害があった地域に建っています。もちろんログハウスはびくともしませんでした。
では、本題へ。
今回は、ログハウス建築のコンセプトについてです。
C社の建築実例を見せてもらい始めた頃、それらが個性的過ぎて憧れるとともに、自分もそれらに負けない個性的なログハウスを建てたいと思うようになりました。
しかし、その後長く住むことになるであろう大切な家。奇をてらった物ではなく、快適に過ごせて、使い勝手が良い事も大切です。
そこで!
マイホームとしてのログハウスのコンセプトを考えて、整理しておくことにしました。
当時はまだC社とも契約前で、土地探しをしている段階です。これから、いろんな事が決まっていくに従って、迷う事もあるかと思いますが、自分の中でブレない所というか、原点回帰できる所があると良いと思ったのです。
また、これはC社だから出来る事ですが、ハンドカットのフルログの中でもテイストを選べます。フルログの中でもどんなのがいいですか?と。
他のメーカーは、どの建築実例も似たテイストになっている場合が多いです。
だから自分のログハウスのテイストを決めるに当たって、自分の好み、コンセプトなどを整理することにしました。
ちなみにログハウスをたくさん見ている人は分かると思いますが、ハンドカットのフルログでもメーカーごとに個性が出ます。特に、樹種がどの建物も同じとか、そのメーカーおすすめの構造があって建築実例に多く採用されてるとかで、おおよそこのメーカーの建築かな?と分かって来ます。細かな板金処理、破風なども特徴がよく出ます。
例えば栃木県B社↓
太いログ材でおおむね8段で組むのが標準のようです。
また、左右対象の構造にして、真ん中のリビングは外に三角に飛び出していることが多いです。
お金持ちの人が別荘に選ぶと良いかな?
次は群馬県N工業↓
ここはログ材はダグラスファーのみのようです。ログ材の中心の方は色が濃く、赤っぽくなっています。国産材のスギも同じような色ですが、この赤い部分が水や虫に強いです。また、そのログ材の上に塗料を塗って、テカテカ感があります。屋根もほぼ一辺倒、大屋根とは別に真ん中の玄関に小屋根をかけるスタイルです。これは私もいいと思って採用しました。
次は三重県K社↓
テーパーがきつく、丸太の太い細いを交互に積むので余計にそれが際立ちます。また、妻壁(二階の三角形部分の壁)をログ壁より外に出す(このメーカーはこの構造をオーバーハングと読んでます)のが特徴です。妻壁がある面は屋根が高く雨に濡れやすいので、妻壁を外側に出すことでその下のログ壁を雨から守っています。
ちなみに屋根が下がっている方の面(画像だと太陽光パネルが付いている面)は、屋根が下まであるお陰でログ壁が雨に濡れにくいですが、それでもさらに桁を外に出して雨に濡れにくくする事があります。この構造はアウトリガーと言いますが、アウトリガーは私も採用しました。
この3社だけ比べても、ハンドカットログハウスでもテイストが違う、という事がお分かりいただけたと思います。
では私が建築を依頼するC社はこんな感じです。↓
ログ材としては良くないとされている、デコボコの丸太をあえて使っています
これはオーソドックスな物
玄関部分の柱にコブがある木を使っています。家の中は海賊をテーマにした男の秘密基地という感じになっています。
億を超える豪邸、車庫の上のトラス(妻壁部分の丸太でW型になった所)がカッコいいです。もちろん内部もスゴイです。
建築途中ですが、木の皮を残したまま加工しています。普通は木の皮はむいてしまいます。
ポストアンドビームでも極太!
ここまでくると、C社の建築実例は特徴に共通点がないのが特徴だと言えるかもしれません。従って、コンセプトを明確にしておく事はますます重要になって来ます。今まで進めてきた中でも、何度か振り返りました。
コンセプト
・本物志向
ログハウスの原点に立ち帰る。丸太を積んだだけの簡素な小屋で、なるべく自然素材のみを使う。住むのはその場所・その土地。家は器に過ぎない。その土地の自然環境に合った家にする。
・機能美
デザインよりも機能性、耐久性を重視する。必要な機能を満たすための構造を採用した結果、自ずとデザインが決まる。そのデザインはシンプルで普遍的で美しいものとなるハズ。ログ材は不必要に削らない。
・他にも負けない個性を
機能美とは矛盾するかもしれないが、やはり他のログハウスにも負けない個性が一つ欲しい。いい意味での個性・わがままを。樹種にこだわる?平屋にする?アーチカットや階段などの内部造作にこだわる?
・防災
ログハウス自体が火災や地震には強い工法だが、それでも地震にはなるべく強い構造にする。薪と薪ストーブがあれば暖房と料理には困らない。薪のストックは多めに。日頃からなるべく電力に頼らない生活を。
・生活を楽しむ
お金を使って娯楽施設に行くのではなく、日常生活を豊かにする。家や庭の維持・管理もなるべく自分で行う。インテリアも必要となれば自分で作る。家の経年変化も楽しむ。ログの塗料は無色透明な物を使い、外側のみ塗る。内部は無垢のまま。
上記はコンセプトを決めた当時のもので、すでに理由があって変更した所もありますが・・・少々補足を。
本物志向の項目は、当時はハンドカットのフルログしか建てない、マシンカットにするくらいならログハウス自体建てない、と思っていた頃なので、ハンドカット以外本物じゃないでしょ?という皮肉めいた気持ちから書いたものです。しかしその後、アランマッキー著エコロジカル ログビルディングを読んで謙虚になるとともに、この方針は間違ってない、と思えるようになりました。後半部分は上記著書から引用して、後から追加しています。
機能美の項目は、アウトドアブランド、ホグロフスのパンフレットを読んで感銘を受け、それを家にも活かしたいという思いで書きました。(ちなみにそのパンフレットは今は発行されていません。)具体的には、冷暖房効率と動線の短縮のため、なるべく小さな家にする。屋根もシンプルな三角屋根で、ドーマーはなしとする。基礎は高くする。廊下(移動するためだけのスペース)は作らないレイアウトとする。だだっ広いだけのリビングはいらない。どう過ごすのがリラックスできるのかを明確にして、そのためのスペースを確保する。などを考えて平面図・レイアウトを考えました。
他にも負けない個性をの項目は、後日完成時をお楽しみに。
防災の項目は、最近の自然災害頻発を受けてのものです。妻が東日本大震災の後被災地へ行った経験から、被災してもなるべく自分達で生活出来るようにと、考えています。そうするとオール電化はアウトですね。キャンプでテント生活を一週間耐えられるようにしておくといいね、というアドバイスをもらったこともあり、それもたまに実践していきたいと思っています。
生活を楽しむの項目は、みんなで家で過ごす時間が充実したらいいな、という願いから書きました。DIY、畑、家のメンテナンス、薪割りなど子ども達も一緒にやってくれたらいいなぁ、と思っています。ちなみにログ材の塗装はやめて、外部も無塗装とするように、計画は変更しました。実際に約25年、無塗装のログハウスを見たからです。エコロジカル ログビルディングにも書いてありましたが、適した土地をえらび、大きな屋根をかけるなど構造を工夫すれば、ほぼメンテナンスフリーにできる、と。しかし実際は塗料で塗ったものしか見当たらない。高温多湿な日本だから、と諦めるのか。その答えがそこに実物としてありました。それについてはまた別のブログに書きます。
ハンドカットのフルログを検討されている方へ。
あなたはハンドカットのフルログを選んだ時点で満足していませんか?選んだメーカーのテイストに染まっていませんか?そのメーカーのテイストはあなたの好みですか?もう一歩踏み込んで、別のテイストは無いか検討してみませんか?
ハンドカットのフルログでもどんなテイストにするか、コンセプトを明確にすることをオススメします。